第360号『ゼロから考えない思考法』
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ゼロから考えない思考法 ビジネスプロデューサー 鈴木 領一
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こんにちは、ビジネス・プロデューサーの鈴木領一です。
成長が止まった業界でも、業績を伸ばし続ける会社がある。
私が先日取材したカラオケ運営会社もその一つだ。
カラオケ人口は５０００万人だが、全国施設数は１９９７年の
１万３８００施設をピークに減少。０９年に６９００施設まで落ち込み、
ここ数年は横ばいだ。成長は完全に止まったかに見える。
カラオケ店舗数日本一の株式コシダカは、２０１１年１１月に新業態の
一人カラオケ専門店「ワンカラ」を東京神田に出店した。
カラオケは仲間とグループで行くのが普通だが、ここ近年一人でカラオケを
するいわる「一人カラオケ」をする人が増えてきた。
コシダカはそこに注目したのだ。
既存店で一人カラオケをする人の割合が２割に達した段階で、コシダカ内で
「一人カラオケ専門店」の企画がスタートした。
当初はこの企画に不安視する見方もあった。なぜなら、既存店の売上を
落としかねないリスクもあったからだ。
しかし、新しいチャレンジは成功する。
神田店「ワンカラ」がオープンすると、初日から行列ができ、月商は
２４室で６００万円を記録した。敷地面積あたりでは予想以上の結果だった。
一人カラオケ専門店は、従来のカラオケ店とは何もかも違う。一部屋は
２平方メートル程度しかなく、一人で歌うために最適化された省スペースだ。
完全防音で、ヘッドフォンを付けて思う存分歌える。料金は一時間６００円
から使える。
利用年齢層は２０代後半から４０代で、幅広い年齢層に支持されてる。
平日だと仕事帰りのビジネスマンも多く、女性の利用も多い。友達と来店して、
それぞれ個室に分かれて歌い、帰る時間に待ち合わせをするという
利用スタイルもあるようだ。
さらに注目すべきは、ビジネスモデルの変化だ。
従来のカラオケ店の収益の柱は飲食である。食事やお酒を飲んでもらうことで
粗利を稼ぐのが従来のカラオケ店のビジネスモデルだ。
ところが、「ワンカラ」では、飲食の需要はない。一人カラオケを楽しむ
お客は純粋に歌うことに集中したいため、飲食のメニューを用意しても
売れないのだ。
ワンカラでは、飲食のメニューはなくし、そのかわりフリードリンクコーナー
を設けた。そこでは収益を得られないため、一人カラオケ部屋の時間貸しで
商売をするビジネスモデルなのだ。
しかし、一人カラオケではリピートが従来のカラオケ店よりも多く、多い人は
毎日でも利用するという。
既存のビジネスモデルを大きく変化させる「ワンカラ」の成功をみて、
大手カラオケ店も一人カラオケに力を入れ始めた。
しかし先行する「ワンカラ」にはまだまだ追いついていない。
ワンカラを誕生させた株式会社コシダカの成功のポイントは、既存店での
変化に気づき、それを形にしたところだ。全く新しいビジネスモデルを
考えるには相当なハードルがあるが、既存のものの変化から新しいアイデアを
見つけるのは難しくない。
成長が止まった業界でも、時代の変化で何らかの変化が出てきているはずだ。
そこに注目し、そこから具体的な新規事業を生み出すことが成功の近道なのだ。
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編集後記 副編集長 高塩 吉明
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当メールマガジンをご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
昨日、ノーベル賞受賞者の発表があり、医学生理学賞部門で山中伸弥氏が授与
されることになりました。
これまでは受精卵が分裂を繰り返して心臓や筋肉、神経、皮膚などといった
さまざまな臓器や組織の細胞に分化する際、分化した細胞は分化前の状態
には戻らないと考えられていました。
しかし、マウスから取り出した皮膚細胞に４種類の遺伝子を入れることで、
あらゆる組織や臓器に分化する能力と高い増殖能力を持つ「人工多能性細胞」
を作り出すことに成功しました。
この研究成果は、拒絶反応の少ない再生医療や、難病の仕組みの解明などに
つながるものとして高く評価されたようです。
現在は再生医療への応用研究が国内外で急速に進んでおり、神戸市では、
網膜色素上皮細胞を眼球に移植することで難病の「加齢黄斑変性」を治療する
臨床研究を早ければ来年度にも始めるようです。
長年の研究の成果がこのような形で実を結ぶということはそうあるものでは
ありません。同じ日本人として誇りに思いますね。
次号、第３６１号は１０月１５日（月）に配信予定です。どうぞお楽しみに！
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