第264号 相続税と所得税の二重課税問題における最高裁判決、ファイブフォース分析の使い方
┏╋━ 知って得する経営塾 ━━━━━━━━ 第264号 2010年8月16日━━
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■□■ 目次 ■□■
タックスペイヤーの視点109 税理士・編集長 榎本 恵一
-相続税と所得税の二重課税問題における最高裁判決-
問題を解決する 中小企業診断士 駒井 伸俊
-5つの力から業界をみるその2-
編集後記 副編集長 秋葉 和彦
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タックスペイヤーの視点109
-相続税と所得税の二重課税問題における最高裁判決-
税理士・編集長 榎本 恵一
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皆さん残暑お見舞い申し上げます。
本当に今年の暑さには参りましたが、お元気にお過ごしでしょうか。
さて、最近の経済事情は、すこぶる悪さが露呈しており、本当に、今年の後半
は怖さが見え隠れしています。この件に関しましては、経済アナリストの藤原
直哉先生とインターネットラジオにて対談を行っておりますので、ご視聴して
みて下さい。
インターネットラジオ『対談!経営語録』
【https://www.ecg.co.jp/blog/pod-taidan_post_163.php?mm=264】
今年のビックリは沢山ありますが、やはり今一番のビックリは最近話題の高齢
者の所在不明騒動(騒動というより事件)です。何で今頃という事もあります
が、行政の管理の杜撰さにはあきれてしまいます。
また、私の専門分野では先月に画期的な最高裁の判決がありました。いわゆる
『相続税と所得税の二重課税問題』です。今回は、この件を取り上げてみたい
と思います。
この事件は、生命保険金を遺族が年金で受け取る場合に、相続税に加えて所得
税が課税されるのは二重課税だとして争われていた裁判です。
最高裁判所(第3小法廷・那須弘平裁判長)は7月6日、二重課税にあたらな
いとする国側の主張を認めた二審・福岡高裁判決を破棄する判決を行いました。
これにより、所得税の更正の取消しを求める納税者の主張を認めた一審・長崎
地裁判決が確定しました。
即ち、遺族が年金形式で受け取る生命保険金のうち相続税の課税対象となった
部分については、所得税法9条により所得税の課税対象とならないとするもの
です。
この問題について7月7日(水)に野田財務大臣から、以下の方針が発表され
ています。
「まず、今般の最高裁判決については謙虚に受け止めて、そして適正に対処し
ていきたいというふうに思います。
そのうえで、これまでのいわゆる解釈を変更することになりますが、そうい
う変更をして、そして過去5年分の所得税については更正の請求を出してい
ただいたうえで、それを経て減額の更正をするという形の対処をしていきた
いというふうに思います。誠意を持って対応していきたいと思います。
問題は5年を超える部分でございます。5年を超える部分の納税の救済につ
いては、これは制度上の対応が必要になると思います。
法的な措置が必要なのか、政令改正で済むのか、これはよく子細に検討させ
ていただきたいと思いますけれども、関係者の皆様にご迷惑をかけないよう
に、これも対応をしていきたいと思います。
さらにこれ以外の、生保年金以外に相続をした金融商品で、今回の判決を踏
まえて対応しなければいけない、改善しなければいけないものもあるかもし
れません。
それについては、改善すべきは改善をしていくということで、具体的には政
府税調の中で議論をして来年度の税制改正で対応するということも視野に入
れていきたいと思います。」
国税庁においては、上記の方針を踏まえ、これまでの法令解釈を変更し、これ
により所得税額が納めすぎとなっている方の過去5年分の所得税については、
更正の請求を経て、減額更正を行い、お返しすることとなります。
現在、判決に基づき、課税の対象とならない部分の算定方法などの検討を進め
ていますので、具体的な対応方法については、対応方法が確定しだい、国税庁
ホームページや税務署の窓口などにおいて、適切に広報・周知を図っていくこ
ととしています。
また、過去5年分を超える納税分については、上記の方針に基づいた対応策が
決まりしだい、適切に対処するとの事です。
上記の問題点は、(1)そもそも、これに関する取り扱いは可能かどうか、
(2)5年を過ぎた所得税の還付は出来るのか、(3)二重課税問題は氷山の
一角ではなどを考えてみました。
まず、(1)ですが、この判決で取り扱っている遺族に保険金を年金で支払う
タイプの商品は、現在の保険会社の正に主力商品でもあり、今回の判決と同様
の商品は、数万とも数十万とも言われています。
これらの件に関しては、保険各社がホームページなどで見解や生命保険協会な
どでも統一的なコメントを出してますが、これらの事に関して国、保険会社、
相続人などが色々と絡みますし、全面的な解決に関しては気の遠くなる時間が
掛かると思います。
次に(2)の5年を過ぎた取り扱いに関して担当大臣である野田財務大臣が微
妙なコメントをしました。本来所得税の還付は5年が限度であるところを5年
を過ぎた分に関して制度を超えて還付するかどうかです。
仮にこの判決で5年を超えて還付なるものが認められたとしたならば、過去や
将来の行政の在り方にも関係すると思われます。
最後に(3)の今回の二重課税問題は氷山の一角ではないかですが。まず、今
回の原告である福岡県在住の方の勇気に感謝とお礼を申し上げなければなりま
せん。
そもそも裁判は、長時間に渡り精神的な苦痛と裁判費用の問題があり、なかな
か思いきれないものです。そこを超えて行動された事により今回のような問題
が社会問題として提起されたのです。
恐らく、生命保険に限らず色々な商品が巷に氾濫していますし、他にも相続税
と所得税の二重課税だけではなく、他の税金に関してもそれに抵触する恐れが
無いとは言い切れません。
皆さんがタックスペイヤーの精神を持って疑問を感じたら、このような形に出
来るかは別としても常に疑問を持つ行動が大切です。
今後、消費税も含めた税の抜本的構造改革が行われる予定ですが、その際にも
是非とも皆さんで監視していきましょう。
最後に、まだまだ暑い日が続きますがお身体ご自愛ください。
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問題を解決する-5つの力から業界をみる その2-
中小企業診断士 駒井 伸俊
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前号ではミクロ環境をみる枠組みとして、『ファイブフォース分析』をご紹介
しました。
簡単に振り返ってみると『ファイブフォース分析』は、下記の5つの競争要因
から、業界の構造を把握、検討するフレームワークでした。
(1)供給業者(売り手)の交渉力
(2)消費者(買い手)の交渉力
(3)業界内の競合他社との敵対関係(4)新規参入企業の脅威
(5)代替品の脅威
『ファイブフォース分析』は業界の収益力や魅力度をみるには有効なフレーム
ワークなのですが、5つの競争要因をパッと頭に思い浮かべることはなかなか
難しいものです。
そこで、5つの競争要因を人間の体に置き換えてみると、意外と簡単にイメー
ジが作れます。
まず、業界の魅力を体の具合ととらえます。そして(1)供給業者(売り手)
の交渉力と(2)消費者(買い手)の交渉力は左手と右手で、横のプレッシャ
ーと考えます。
供給業者(つまり、左手)から「値段を上げますよ」とか、「最低のロットを
上げますよ」とか言われれば、業界としては辛くなります(体の調子は悪くな
ります)。
また、消費者(つまり、右手)から「納期をもっと早くしてくれ」とか「サー
ビスのレベルを上げてくれ」とか言われれば、業界としては対応しないわけに
はいかないので、大変です(体もきつくなります)。
このように(1)と(2)は購入して販売してといったビジネスプロセスであ
り、横のプレッシャーです。
次に、(4)新規参入企業の脅威、(5)代替品の脅威は頭と足で、縦のプレ
ッシャーと考えてみてください。
これまで、業界の中は決まった頭数で競い合っていたのに、新たに新規参入者
が増えれば(頭数が増えれば)、さらに争いは激しくなります(体がフラフラ
します)。
また、これまで二本足でしっかりと立っていたのに、その足にとって代わるよ
うな製品やサービス、いわゆる代替品が現れれば、業界の存亡にかかわるでし
ょう(立ってはいられません)。
このように(4)と(5)は頭と足で、縦のプレッシャーです。
最後に、(3)業界内の競合他社との敵対関係はお腹の中です。業界内の競合
同士の争いが激しければ、各企業が収益を上げることは難しくなります(お腹
の中がゴロゴロしていれば、あまり快適的とはいえないでしょう)。
以上、5つの競争要因を左手(供給業者)、右手(消費者)、頭(新規参入企
業)、足(代替品)、お腹(業界内の競合他社)と置き換えることで、『ファ
イブフォース分析』が意外とスッと頭に入ってきたのではないでしょうか?
あとは、ぜひ実際に皆さんのいらっしゃる業界を分析してみて、自分で使える
フレームワークにしてみてください。
■□■ 中小企業診断士 駒井 伸俊 プロフィール ■□■
【https://www.ecg.co.jp/about/komai.php?mm=264】
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編集後記 副編集長 秋葉 和彦
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いつも当メールマガジンをご愛読いただきましてありがとうございます!
最近、引き続き雇用情勢もあまり良くないとの話を聞きますが、そんな中で最
低賃金の引き上げもあったりと(結果的に雇用が抑制され労働者側の首を絞め
る事になりそうです)、ますます情勢は厳しくなると思います。
それとは別に色々なところで従業員とのトラブルをよく耳にします。これから
質を上げていかなければ、生き残りが厳しい状況にあって、問題社員を抱えて
対応に追われていては、企業はなかなか成長していけません。
雇用情勢が厳しいからと自分の質を高めて求職する人が増えてくれば、景気も
良くなるでしょうが、企業にとってそんなめぐり合いのチャンスはなかなか無
いのが現状だと思います。
今は厳しい時期かもしれませんが、こういう時期にこそ社員教育や体制の整備
に力を入れるべきなのかもしれません。
次回第265号は8月30日(月)に配信予定です。お楽しみに!
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