中小企業経営塾 第39号
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■ 目次
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▼掲示板
▼タックスペイヤーの視点3 税理士 榎本 恵一
▼不況の中のベンチャーブーム 中小企業診断士 駒井 伸俊
▼グローバル社会がもたらす歪(働く環境の大切さ) MBA 長友 孝幸
▼編集後記 副編集長 小林 義和
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■ 掲示板
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歳時記
4月 1日 エイプリルフール
省エネルギーの日
4月12日 世界宇宙旅行の日
金時師匠多忙のため今回はお休みです。4月1日夜9時15分NHK『私の青空
2002』でお会いしましょう。
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■ タックスペイヤーの視点3 税理士 榎本 恵一
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3月もあとわずかです。今年は、桜が早く咲き、散るのも早く東京では4月の
入学式の頃には葉桜になってしまいますね。
さて、今号では、前号に引き続き、同族会社の問題を取り上げます。唐突です
が皆さんは「租税回避」と「脱税」の違いはご理解出来ていますでしょうか?
非合法という意味において同じ様に捉える方もいますが、意味は違います。逆
に是非とも「節税」は行いたいと考える方は多いはずです。これを別の言い方
をすれば『節約』と言ってもいいと思います。上記の3つは、いずれも租税負
担の軽減をもたらすと言う点では共通性を有しています。では、それぞれの特
徴をみていきます。
「租税回避」とは、租税法規が予定していない異常な形態を用いて税負担の減
少を図る行為です。「租税回避」は、一種の税法上の脱税行為と言うことが出
来ます。一方「脱税」とは、課税される要件の事実の全部または一部を秘匿す
る行為であり、全くもって言語道断の行為です。課税事実を偽り、故意に租税
を免れるものでありそれは犯罪を構成するものです。(最近は、国会議員に関
して疑惑をかけられている方が存在します。国民の税金を議員が私的に流用し
ている事実があるならば大変遺憾な問題です。)
「節税」とは「tax saving」と呼ばれ租税法規が予定しているところに従って
税の負担の減少を図る行為である。代表的なものに、保険商品を使い保障を買
いながら課税の繰延をさせる行為があります。もっとも「節税」と「租税回避」
の限界は必ずしも明確ではなく、結局は社会通念によってきめざるをえないと
言われています(金子 宏著「租税法」)。
さて、今号のテーマである同族会社の行為計算否認に関する問題ですが、同族
会社の場合、上記のような「租税回避」的な行為や「脱税」になりかけやすい
行為が行われています。その土壌は、本来会社は、株主のものであり、企業は、
営利を追求し、少しでも多い利益を計上し、株主に配当を出すことも使命の一
つです。しかし、同族会社は前号で触れましたように、家族労働者をはじめと
した、身内の株主が主流であることが一番大きな特徴です。同族会社において
は所有と経営の分離がなかなか行えず、結果少数株主のお手盛りが行われやす
いのです。
税法は、同族会社に対して、その行為または計算でそれを容認した場合には税
負担を【不相当に減少させる】結果となると認められるものがあるときは、そ
の行為または計算にかかわらず税額を計算することが出来る規定を設けていま
す。これを「同族会社行為計算否認規定」といいます。
具体的には、
・不相当に高額な役員報酬・退職金
・不適当な親会社・子会社・系列会社間による無償行為、低廉行為などによる
無利子貸付。
・同族会社が代表者の子供に対し支払った海外留学中の給与及び賞与。
・建物の所有を目的とする地上権の設定等をしたことに伴い、通常の場合の
金銭の貸付の条件に比し、特に有利な条件による金銭の貸付など。
ただし、この同族会社の行為計算否認規定は【不相当に高額】【不適当である
と認められる】などとかなり曖昧かつ抽象的表現であり、客観的に問題もある
規定であると私は考えています。誰がみてもこれはおかしいと思えることは別
にしても、課税庁が、同族会社が実行した行為に対して、上記の『行為計算否
認規定』を乱用して税務調査が行われるのは問題があります。わが国は、租税
法律主義を最高原則とし、国民の財産権保護を使命とする民主主義税法です。
課税庁と納税者の間に信頼関係を築かなければなりません。その意味において
も、タックスペイヤーは、十分に法律の趣旨を理解して経営に望まれることが
肝要です。
次号(第40号)では、日経新聞の報道にもありました、サラリーマンにも申
告納税の道が開かれそうな状況になってきました。そこで、源泉徴収制度と申
告納税制度の関係について分かりやすく解説したいと思います。
参考書籍:金子 宏著「租税法」 弘文堂
* 榎本のコラムは下記からどうぞ
声による情報 03-5909-9102(録音されたメッセージが聞けます)
ホームページによる文字情報 https://www.ecg.co.jp/koe?mm39
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■ 不況の中のベンチャーブーム 中小企業診断士 駒井 伸俊
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助成金マジック(1)-同じ6ヶ月だったのに??-
今号は、支援策を上手に利用した場合としない場合とでは、どれだけの違いが
出るのか、といったお話です。まずは、イメージをつかんでください。たくさ
ん数字がでてきますが、最後までお付き合いください。びっくりしますよ。
こんなケースを考えてみましょう(話を単純化するために期間は半年としてあ
ります。また、でてくる以外のお金はかかっていないこととします)。
和菓子屋さんに勤めていたAさんは、その経験をいかして和菓子製造・販売の
会社を創業することにしました。そこで、家賃(6ヶ月)と和菓子を作るための
機械、その他の備品に300万円を使いました。さらに、従業員を8名(月給30万
円×8人×6ヶ月=1440万円)雇い入れることにしました。そのため、採用等を
目的とした、ホームページ作成(100万円)、適性検査等(60万円)、コンサル
タント料(100万円)、その他(40万円)を支払いました。また、それぞれの従
業員に新たな技能を身に付けてもらうための教育に200万円を費やしました。そ
れから6ヶ月、やる気のある人材をうまく採用することができた上、高い技能を
身に付けてくれたおかげで、創業半年で5000万円の売上(うち2500万円が仕入
れ代金)を達成しました。そこで、Aさんは半年で250万円の報酬をとることに
しました。
Aさんはがんばった甲斐があって、半年で10万円の現金を生み出しました。つ
まり、『現金売上5000万円-現金仕入2500万円-家賃・機械等300万円-給料
1440万円-ホームページ100万円-適性検査60万円-コンサルタント料100万円
-その他40万円-教育200万円-Aさんの報酬250万円=10万円』です。創業半
年にして、10万円の現金を産みだし、Aさん自身も250万円の報酬を手にしまし
た。悪くありません。立派なものです。
さて、ここで、Aさんとまったく同じように独立して、Aさんとまったく同じ
ように半年間商売をしたBさんについて考えます。使ったお金や売上はまった
く同じだとします。ただ一つ違うことは、コンサルタントからアドバイスをう
けたBさんが助成金を有効に活用した点だけです。さあ、結果はどうなるでしょ
う?といったところで紙面が残りわずかとなりました。結論だけいうと、Bさ
んの会社はAさんの数十倍の現金を得ることになります。後は、次号のお楽し
みです。
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■ グローバル社会がもたらす歪(働く環境の大切さ) MBA 長友 孝幸
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テロを生みだす世界情勢の構造から
「恐怖の均衡」という形で表現されていたアメリカとソ連の二極構造が存在し
ていた時代は、二極の均衡の上に成り立った秩序によって世界は二分化してい
るにもかかわらず、その時代の世界秩序は両者の理念に基づいて保たれていま
した。冷戦構造の崩壊によって、世界はグローバル化し、政治、経済、社会活
動が国境を超えて行われるという現実が存在していますが、世界の経済社会に
は未だに希望に満ちた未来図が見えていない状況にあります。
その理由の一つに、冷戦時代の秩序に代わる新しい秩序の枠組みが国際社会の
中に存在していないことが指摘できます。これまでの国際社会は、ウェストファ
リア体制という主権国家によって形成された社会があり、並存する主権国家に
は主権平等と内政不干渉の概念を形成する秩序があります。このような体制が
ベースとなって冷戦崩壊後、世界情勢の構造は二極構造から多極構造に変化し、
その変化に伴った多極構造を前提とする均衡を求める新たな秩序が要求されて
います。
近年、世界のリーダーとしての色彩が強く押しだしているアメリカは行動、一
極構造による秩序構築の可能とする姿勢を感じます。しかし、アメリカの経済
や軍事力が卓越しても、その行使は国際社会によって認められた正当性がなけ
れば、国際社会の安全保障は約束されない現実を私たちはアメリカの同時多発
テロ以降、感じています。
つまり、かつての冷戦時代のリーダーでさえ、世界情勢の構造が変化した現代
では、単独で解決できないほど問題は複雑化し、各地に複合社会が存在する状
況を踏まえて、その問題を把握する必要があります。
そのような世界情勢の構造の中に、フィリピンのテロリストの問題や日本の雇
用問題を当てはめると、両問題に潜む共通点を見出すことができます。
テロリズムを生みだす背景には、絶対的な貧困、民族、地域差別、そこから生
まれる絶望があります。人は単に貧困や差別だけで暴力的なテロリストに走る
ことは考えにくいことです。なぜなら、どんな環境からでも、希望と夢をもっ
て人間は努力してその環境から逃げ出そうと、働きだすからです。しかし、自
分が生きている社会で実現できないことを知ったとき、人は社会に絶望して攻
撃的になると考えられます。これは、テロリストのことではなく、日本の企業
戦士にも当てはまることだと思います。
不況下の日本の経済環境は度重なる企業倒産や整理解雇によるによって、日本
の企業戦士は、戦う場所を失い、自ら新たな解決策を見出せない状況にありま
す。長期間にわたって誇りをもって従事してきた仕事を奪われ、自分の人格ま
でが否定された中高年の自殺や犯罪の増加は、その攻撃的な要素の表れとして
考えることもできます。
突然(日本のケース)と長期(フィリピンのケース)という時間的な相違はあ
るものの、両者が受けるどうしようもできない絶望感は一致しています。この
どうしようもできない絶望感が人を変え、攻撃的にするとなれば、どうしよう
もできない絶望感を多くの人々に与えないこと、すべの人々に平等な雇用の機
会を作ることのできる経済環境の構築やグローバルな企業、経営者が必要とな
ります。
このように、グローバル社会がもたらす歪は、各地の複合社会に更なる試練を
与えています。冷戦崩壊によって、誰もが民主主義の理念に基づいた平和な国
際社会の到来を期待し、働く環境を求めていました。しかし、世界経済の景気
後退やその環境から脱却できない社会情勢に、どうしようもできない絶望感を
感じている人は年々増加傾向にあります。このどうしようもできない絶望感を
緩和する要素を備える「働く環境」こそ、テロリストや日本の企業戦士を救う
特効薬と考えると、雇用を創出するグローバルな企業、経営者の役割は重要で
す。
本来、彼らが望むものはテロ活動ではなく「働く環境」であり、健康な体と優
秀な頭脳を持ち、結婚し、働いて家族を養うこと、子供に未来を託すこと、人
間として当たり前の使命をまっとうできる、働く環境をただ待ち望んでいるだ
けなのです。
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■ 編集後記 副編集長 小林 義和
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せっかく咲いたさくらも雨と強風で散り始めてしまいました。上野や皇居のさ
くらも見頃が短く残念です。でも、それが美しきもののはかなさなのかもしれ
ません。さて、心機一転、新年度です。新社会人の皆さん、メールマガジンの
感想など送ってきてください。
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