配偶者等のパート収入に関する税金や社会保険の「年収の壁」
会社員の配偶者などがパートやアルバイトとして扶養の範囲内で働く場合に意識する年収の壁には、税制上の壁(100万円、103万円、150万円、201万円)や、社会保険上の壁(106万円、130万円)があります。この壁を超えると税金や社会保険料の負担が生じることから配偶者等の就業抑制の一因になっていると言われています。
◆税制上の壁
◎100万円の壁
住民税が課税される年収ラインとなります。住民税には均等割と所得割がありますが、非課税基準額が設けられており、パートによる給与収入が100万円以下でほかに所得がない場合、住民税はかかりません。ただし、自治体によっては均等割の非課税基準額が多少異なるため、年収100万円以下でも均等割がかかる場合があります。
◎103万円の壁
所得税が課税される年収ラインとなります。課税される所得は、パートによる給与収入から給与所得控除(最低55万円)と基礎控除(48万円)などの所得控除を差し引いた残額となりますので、給与収入が103万円以下でほかに所得がない場合は、所得税はかかりません。
また、扶養者が配偶者控除や扶養控除を受ける場合において、配偶者や扶養親族の年収ラインとなります。これは配偶者や扶養親族の合計所得金額が48万円以下であることが要件の一つであり、給与収入のみの場合は103万円以下であれば給与所得控除(最低55万円)を差し引いた合計所得金額が48万円以下となり、控除が受けられます。
※配偶者控除は控除を受ける方の合計所得金額が900万円を超えると段階的に控除額が引下げられ、1,000万円を超える場合は控除を受けることができません。
◎150万円の壁
配偶者特別控除において配偶者控除と同額の控除が受けられる配偶者の年収ラインとなります。配偶者のパート収入が103万円を超えるため配偶者控除が受けられない場合でも、収入に応じた配偶者特別控除を受けることができ、年収150万円以下(給与所得控除を差し引いた合計所得金額は95万円以下)の場合は配偶者控除と同額の控除を受けることができます。
なお、年収150万円を超えると控除額は段階的に減少します。
◎201万円の壁
配偶者特別控除を受けられる配偶者の年収ラインとなります。配偶者のパート収入が201.6万円以上(合計所得金額133万円超)となる場合、配偶者特別控除は受けられません。
※配偶者特別控除は控除を受ける方の合計所得金額が900万円を超えると段階的に控除額が引下げられ、1,000万円を超える場合は控除を受けることができません。
◆社会保険上の壁
◎106万円の壁
特定適用事業所(令和6年10月から被保険者数が51人以上の事業所)で働くパート等の短時間労働者が厚生年金保険健康保険の加入対象となる年収ラインとなります。短時間労働者が①週の所定労働時間が20時間以上、②所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円)、③2ヵ月を超える雇用見込み、④学生ではない、のすべてを満たす場合は社会保険の加入対象となるため、被扶養者から外れて保険料を負担します。
※政府は106万円の壁対策として、短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の加入に合わせて、手取り収入を減らさないための取組を実施する企業に対し、労働者一人当たり最大50万円を助成する「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」を設けています。
◎130万円の壁
上記以外の事業所で働くパート等の短時間労働者が社会保険の被扶養者から外れる年収ラインとなります。被扶養者の年収見込みが130万円以上となる場合は、自身で国民年金・国民健康保険などに加入し保険料を負担します。
※政府は130万円の壁対策として、人手不足による労働時間延長等で被扶養者の収入が一時的に増加して年収130万円以上となる場合、健保組合等が行う被扶養者の収入確認の際に一時的な収入変動である旨の事業主の証明(被扶養者を雇用する事業主が作成)を提出することで引き続き被扶養者認定を受けることができる措置を講じています。