中小企業向け賃上げ促進税制における繰越控除措置
◆概要
中小企業向け賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している資本金1億円以下の中小企業者等が国内雇用者に対する給与等の支給額を前年度より増加させた場合、その増加額の一定割合を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
◎適用要件と税額控除額
令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度(個人事業主は令和7年から令和9年までの各年)における本制度は、雇用者給与等支給額を前年度と比べて1.5%以上増加させた場合に適用を受けることができ、税額控除額は次のようになります。
なお、税額控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限となります。
賃上げ要件 | 税額控除額 |
前年度比+1.5%以上増加させた場合 | 控除対象雇用者給与等支給増加額の15% |
前年度比+2.5%以上増加させた場合 | 控除対象雇用者給与等支給増加額の30% |
◎上乗せ措置
適用事業年度の教育訓練費の額が前年度と比べて5%以上増加しており、教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合は、税額控除率を10%上乗せします。
また、適用事業年度中にくるみん認定、くるみんプラス認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を取得した場合、又は適用事業年度終了時において、プラチナくるみん認定、プラチナくるみんプラス認定若しくはプラチナえるぼし認定を取得している場合は税額控除率を5%上乗せします。
◎繰越控除措置
要件を満たす賃上げを実施した年度において控除しきれなかった金額がある場合は、翌年度以降に5年間繰り越すことができます。例えば、令和6年度に本制度を適用して控除しきれなかった金額は、令和11年度まで繰り越すことが可能です。
◆繰越控除措置に関するQ&A
Q.繰越控除措置はどのような場合に適用できる?
A.本税制の要件を満たす賃上げを実施した年度において、赤字であり法人税が課税されないことから税額控除ができない場合や、税額控除額が控除上限(法人税額等の20%)を超過する場合に、控除しきれなかった額を翌年度以降に繰り越すことが可能となります。
Q.控除しきれなかった額を翌年度以降に繰り越す場合、追加の要件などはある?
A.未控除額を翌年度以降に繰り越す際には、繰り越した額を実際に税額控除する事業年度において、全雇用者の給与等支給額が前年度より増加していることが要件となります。
ただし、実際に税額控除する事業年度において、比較雇用者給与等支給額が霧である場合は、適用不可となります。
Q.繰り越した額を実際に税額控除する事業年度において、中小企業者等又は青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主に該当しない場合、繰越控除を受けることは可能?
A.繰り越した額を実際に税額控除する事業年度においては、青色申告書を提出する必要がありますが、中小企業者等又は青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主に該当しない場合でも適用可能です。
Q.繰越控除措置を適用する場合、必要な手続きはある?
A.繰越控除措置を適用する場合は、1未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書、及び2繰越税額控除措置の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に繰越控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して提出する必要があります。
法人の場合、繰越税額控除限度超過額の明細書と繰越控除を受ける金額の計算に関する明細書の書類が異なります。
Q.繰越税額控除限度超過額の明細書を提出しなかった場合はどうなる?
A.未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度において繰越税額控除限度超過額の明細書が提出されていない場合、未控除額は繰り越されず、繰越税額控除を適用することはできませんので、ご留意ください。