所有者不明土地の解消に向けた住所等の変更登記の申請義務化など
相続登記がされないこと等により、不動産登記簿で所有者が直ちに判明しない又は所有者が判明しても所在が不明で連絡が付かない「所有者不明土地」が全国的に増加しているため、所有者不明土地の解消に向けて、相続登記の申請義務化などを盛り込んだ不動産登記法の改正を含む「民法等の一部改正及び相続土地国庫帰属法」が令和3年4月21日に成立しました(同月28日公布)。
不動産登記法の改正のうち、相続登記の申請義務化や相続人申告登記の新設などは令和6年4月1日に施行されましたが、所有不動産記録証明制度は令和8年2月2日、住所等の変更登記の申請義務化などは令和8年4月1日から施行となります。
◆所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)
登記記録は、土地や建物ごとに作成されており、全国の不動産から特定の者が所有権の登記名義人となっているものを網羅的に抽出する仕組みがなかったため、所有権の登記名義人が死亡した場合に相続人が把握しきれず、相続登記がされないまま放置されてしまう事態が生じていました。
相続登記の申請義務化に伴い、相続人において被相続人名義の不動産を把握しやすくすることで、当事者の手続的負担を軽減するとともに登記漏れを防止する観点から、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産(そのような不動産がない場合には、その旨)を一覧的にリスト化し、証明する制度を新設します。
※条文上は「これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む」とされており、将来的には、表題部所有者への拡大も検討予定。
◎所有不動産記録証明書の交付請求が可能な者の範囲
生存中の自然人(個人)のほか法人についても本制度の対象としつつ、プライバシー等に配慮して請求範囲を次のとおり限定します。
・自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について本証明書の交付請求が可能。
・相続人その他の一般承継人は、被相続人その他の被承継人に係る本証明書について交付請求可能。
◆住所等の変更登記の申請義務化と職権登記制度(令和8年4月1日施行)
所有権の登記名義人の住所等が変更されないことも所有者不明土地の主要な発生原因となっていることから、住所等の変更登記の申請を義務化するとともに、登記官が職権で住所等の変更登記を行う仕組みも設けられます。
◎住所等の変更登記の申請義務化
所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付けます※。
正当な理由なく申請を怠った場合には、5万円以下の過料が科される可能性があります。
※施行前の住所等の変更でも変更登記をしていない場合は義務化の対象となり、令和10年3月31日までに変更登記の申請が必要となります。
◎職権による住所等の変更登記
住所等の変更登記の手続の簡素化・合理化を図るため、登記官が他の公的機関から取得した情報に基づき、職権で住所等の変更登記をすることで申請義務が履行済みとなる仕組みを導入します。
自然人(個人)の場合は、登記申請時等※に氏名・住所のほか、生年月日等の「検索用情報」を事前に提供した上で、登記官が定期的に住民基本台帳ネットワークシステムに対して照会し、住所等の変更があれば本人の了解を得て、職権で変更登記します。
※施行後に所有権の登記名義人となった場合、その登記申請時に検索用情報を提供します。施行前から所有権の登記名義人である場合は、任意での検索用情報の提供を可能とする予定。
法人※の場合は、法務省内のシステム間連携により、商業・法人登記システムから不動産登記システムに対して名称や住所を変更した法人の情報を通知し、取得した情報に基づき、登記官が職権で変更登記をします。
※商業・法人登記のシステムとの連携に必要となる会社法人等番号が不動産の登記簿に登記されている場合に限られます。
◆所有権の登記名義人の死亡情報についての符号の表示(令和8年4月1日施行)
所有権の登記名義人の相続に関する不動産登記情報の更新を図る方策の一つとして、登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から取得した死亡情報に基づいて不動産登記に死亡の事実を符号によって表示する制度を新設します。
これにより、登記記録から不動産の所有権の登記名義人の死亡の事実が確認可能となります。