NISA口座内の上場株式等を相続した場合の取扱い
◆NISA制度の概要
NISA(少額投資非課税制度)は金融機関に開設したNISA口座を通じて上場株式の上場ETF、株式投資信託等に投資すると、本来20.315%が課税される配当金や売買益等が非課税となる制度です。
令和6年1月からNISA口座は、「つみたて投資枠(年間投資上限120万円)」と「成長投資枠(年間投資上限240万円)」で構成され、併用により年間360万円まで投資が可能となり、無期限で非課税保有できるなど抜本的に拡充されました。ただし、NISA口座で保有する商品の金額(非課税保有額)には、買付額ベースで1,800万円の限度額が設定されており、年間投資上限額の範囲内でも限度額を超えて投資することはできません。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
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年間投資上限額 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額 | 無期限 | |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) ※簿価残高方式で管理(枠の再利用が可能) | |
投資対象商品 | 積立・分散投資に適した投資信託 | 上場株式・投資信託等 |
対象年齢 | 18歳以上 |
◆NISA口座を開設している親族が亡くなった場合は
NISA口座を開設していた方が亡くなった場合、そのNISA口座で保有していた上場株式や投資信託等の金融商品により生じる利益に対しては相続発生時点まで非課税措置が適用されます。
また、NISA口座で保有していた上場株式等は相続財産に含めて相続税の計算をします。したがって、被相続人の財産を相続する相続人は上場株式等の評価額などを加えた相続財産価額から債務等を控除した課税価格が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合は、相続税の課税対象となり申告が必要となります。
なお、被相続人のNISA口座で保有していた金融商品を相続した相続人は、相続により取得する上場株式等を相続人の特定口座又は一般口座のいずれかに受け入れることになります。この場合、受け入れる上場株式等の取得日は相続が発生した日となり、取得価額は相続が発生した日の時価となるため、相続時点で含み益が生じている場合でも所得税等は課税されませんが、相続後に生じた利益は課税対象となります。
◎留意点
・相続によりNISA口座で保有されていた上場株式等を取得する場合、NISA口座自体を相続することはできません。
・相続人がNISA口座を開設している場合でもNISA口座には新たに購入した上場株式等及びNISA口座で保有する上場株式等の組織再編等により取得した上場株式等しか受け入れることができないため、相続人のNISA口座に相続した上場株式等を受入れることはできません。
・相続の発生日から実際に相続人の特定口座又は一般口座へ移管するまでの間に、被相続人のNISA口座で支払われた配当金や含み益がある場合には、所得税等が課税されることとなります。
◎手続き等
NISA口座を開設している方が亡くなった際は、口座が開設されている金融機関に連絡を入れて手続きを行わなければなりません。
NISA口座の上場株式等を相続した相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日以後遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」等を被相続人のNISA口座を開設されている金融機関に提出する必要があります。
また、NISA口座の上場株式等を相続人の特定口座に受け入れる場合は、被相続人のNISA口座が開設されている金融機関に「相続上場株式等移管依頼書」を提出する必要があります。
なお、相続人の特定口座に受け入れる場合、相続人の特定口座は被相続人のNISA口座が開設されている金融機関と同一の金融機関に開設していることが必要となるほか、相続により取得した上場株式等のうち同一銘柄は全てその特定口座に移管される必要があります。