令和6年分の贈与税の申告状況と改正点
◆令和6年分の贈与税の申告状況
◎暦年課税の申告状況
・贈与税の申告書を提出した申告人員47万4千人(対前年比▲7.0%)のうち、暦年課税を適用した申告人員は39万7千人(同▲14.0%)で、申告納税額がある納税人員は32万7千人(同▲11.8%)です。
・納税人員の申告納税額は3,274億円(同+9.7%)で、1人当たりの申告納税額は100万円(同+24.4%)となっています。
◎相続時精算課税の申告状況
・贈与税の申告人員のうち、相続時精算課税を適用した申告人員は7万8千人(同+59.2%)で納税人員は6千人(+24.6%)です。
納税人員の申告納税額は661億円(同+17.5%)で、1人当たりの申告納税額は1,146万円(同▲5.8%)となっています。
◎住宅取得等資金に係る贈与税非課税制度の申告状況
・父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に一定額まで贈与税が非課税となる制度を適用した申告人員は4万5千人(同▲27.5%)です。
・贈与を受けた住宅取得等資金の金額は3,435億円(同28.2%)で、そのうち非課税の適用を受けた金額は3,173億円(同29.2%)となっています。
◆令和6年以後の贈与について適用される改正
◎暦年課税
暦年課税は1年間に贈与を受けた財産の合計額(複数人から贈与を受けた場合や、同じ人から複数回の贈与を受けた場合は、それらの財産価額の合計額)を基に贈与税額を計算する課税方式です。贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額(受贈者ごとに年110万円)を超える場合、基礎控除後の課税価格に続柄や年齢に応じた「一般税率」又は「特例税率」を適用して贈与税額を計算します。
【暦年課税による生前贈与の加算対象期間等の見直し】
令和6年から暦年課税による贈与で取得した財産を相続財産に加算する期間が見直され、相続開始前7年以内(改正前3年以内)の贈与が加算対象になりました。ただし、相続開始前3年超7年以内に取得した贈与財産は合計額から100万円を控除した額が加算されます。なお、令和6年以後の贈与で取得する財産に係る相続税に適用されるため、加算対象期間は次のようになります。
贈与者の相続開始日 | 加算対象期間 |
令和6年1月1日~令和8年12月31日 | 相続開始前3年間 |
令和9年1月1日~令和12年12月31日 | 令和6年1月1日~相続開始日 |
令和13年1月1日~ | 相続開始前7年間 |
◎相続時精算課税
相続時精算課税は贈与税相続税を通じた納税を行う方式で、原則として贈与の年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子または孫などに対する財産の贈与について、暦年課税に代えて適用できる制度です。贈与者ごとに選択できますが、選択した贈与者(特定贈与者)からの贈与は全て相続時精算課税が適用され、暦年課税への変更はできません。
【基礎控除額の創設】
令和6年から相続時精算課税に年110万円の基礎控除が創設されたことで、特定贈与者から贈与を受けた財産は基礎控除額(年110万円)及び特別控除額(累計2,500万円)を控除した後の金額に一律20%の税率で贈与税額を算出します。また、特定贈与者が亡くなった場合は贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額の合計を基に計算した相続税額から既に納めた贈与税相当額を控除した額を納付しますが、令和6年以後の贈与財産は基礎控除額を控除した後の価額となります。
なお、本制度を初めて選択する場合は贈与税の申告期間内に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要となりますが、特定贈与者から贈与を受けた財産の価額の合計額が年110万円以下の場合は贈与税の申告が不要となります。
【土地・建物の価額の特例の創設】
特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物が令和6年以後に生じた災害によって一定以上の被害を受けた場合、特定贈与者が亡くなった際に相続税の課税価格に加算する当該土地又は建物の価額を災害による被災価額(被害額から保険金など差し引いた金額)を控除した残額にできます。