10月以降に改定される「地域別最低賃金」の概要
◆令和6年度地域別最低賃金の答申の概要
・令和6年度の地域別最低賃金について、中央最低賃金審議会が示した引上げ額の目安などを参考として、各地方最低賃金審議会が答申した改定額が出揃い、47都道府県で50円~84円の引上げとなり27県が目安額(50円)を超える引上げ額を答申しました。
※引上げ額が84円は徳島県、59円は岩手県愛媛県、58円は島根県、57円は鳥取県、56円は佐賀県・鹿児島県沖縄県、55円は青森県・山形県・福島県・高知県・大分県・長崎県・宮崎県、54円は秋田県新潟県・熊本県、53円は福井県、52円は茨城県・香川県、51円は石川県・岐阜県・兵庫県・和歌山県・山口県・福岡県。それ以外の20都道府県は50円。
・改定額の全国加重平均額は1,055円(前年度比51円引上げ)となり、改定額の最高額は東京都の1,163円、最低額は秋田県の951円です。
・答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から11月1日までの間に順次発効される予定です。
◆最低賃金制度の概要
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。仮に最低賃金額より低い賃金を労働者の合意の上で定めても法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
◎最低賃金の種類
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
「地域別最低賃金」は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ定められています。
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金で、関係労使が基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されています。
なお、地域別最低賃金額以上を支払わない場合は最低賃金法に罰則(罰金50万円以下)、特定最低賃金額以上を支払わない場合は労働基準法に罰則(罰金30万円以下)が定められています。
◎最低賃金が適用される労働者の範囲
地域別最低賃金は、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
なお、①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方、②試の使用期間中の方、③基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方、④軽易な業務に従事する方、⑤断続的労働に従事する方については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
◎最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。実際に支払われる賃金から、①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)、②1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、③時間外割増賃金、④休日割増賃金、⑤深夜割増賃金、⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当を除外したものが最低賃金の対象となります。
◎派遣労働者に適用される最低賃金
派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の事業場の最低賃金が適用されます。
◆賃金引上げに関する主な中小企業支援策
◎業務改善助成金:生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。
◎キャリアアップ助成金:賃金規定等を改定し、非正規雇用労働者の基本給を3%以上賃上げする場合に、キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」が利用できます。
※最低賃金の改定に伴う賃金規定等の改定をした場合も対象。
◎中小企業向け賃上げ促進税制:国内雇用者に対する給与等支給額を前年度比1.5%以上増加させた場合に、その増加額の一定割合を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できます。
※令和6年4月以降に開始する事業年度から最大で給与等支給増加額の45%を税額控除できます(控除額は法人税額又は所得税額の20%が上限)。また、繰越控除措置が創設され、控除しきれなかった金額を最長5年間繰越すことが可能です。