令和6年度税制改正に関する各府省庁の要望(主に経産省要望)
◆大企業向け中小企業向け賃上げ促進税制の拡充及び延長
・今年の30年ぶりの高い水準の賃上げ率を一過性のものとせず、少子化対策にもつながる「構造的・持続的な賃上げ」を実現する観点から、本税制の延長期間を長期化する。
・賃上げを行う企業の裾野の拡大に向けて、中堅企業に対する措置を強化(要件の緩和等)するとともに、赤字等の厳しい業況の中にある中堅企業の賃上げを後押しする観点から、税額控除額が控除の上限額を超えた場合に、控除しきれなかった金額の繰越しを認める措置を創設する。
・仕事と子育ての両立や女性活躍支援に積極的な企業に対する控除率の上乗せ措置を創設する。
◆法人版(特例措置)及び個人版事業承継税制の見直し及び延長
・法人版事業承継税制(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)の特例措置は令和9年12月末まで、個人版事業承継税制(個人事業者の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)は令和10年12月末までの時限措置であり、いずれも適用を受けるためには承継計画を策定し、令和6年3月末までに都道府県庁へ提出(確認申請)することが必要とされている。
・経営者の高齢化の進展等を踏まえ、承継計画の提出(確認申請)の期限を一定期間延長するとともに、本税制の適用期間における事業承継の取組等も踏まえ、円滑な事業承継のために必要な措置について検討する。
◆イノベーションボックス税制の創設
我が国の研究開発拠点としての立地競争力を向上し、民間企業の無形資産投資を後押しするため、民間企業の課税所得のうち、我が国で研究開発した知的財産(特許等)から生じる所得(ライセンス所得等)に対して優遇税率を適用する措置として「イノベーションボックス税制」を創設する。
◆エンジェル税制の拡充
令和5年度税制改正で、株式譲渡益を元手とした創業間もないスタートアップへの再投資等に対する非課税措置を創設したが、株式譲渡益が発生した年内に投資を行う必要がある等、課題が残る。
・更なる利活用拡大のために、1株式譲渡益を元手とする再投資期間(現行は同一年内)の延長、2信託を活用して投資事業有限責任組合(LPS)に出資し、スタートアップに投資する場合等の対象化等を検討する。
◆ストックオプション税制の拡充
税制適格ストックオプション(権利行使時の課税繰延べ等)について、株式保管委託要件の撤廃、社外高度人材への付与要件の緩和・認定手続の軽減、権利行使限度額の大幅な引き上げまたは撤廃等、利便性を向上させるための見直しを行う。
◆個人から上場ベンチャーファンドへの投資を促す税制措置の創設
スタートアップへの資金供給を更に強化するため、非上場株式に投資する上場ベンチャーファンドへの個人からの投資等に対する、税制上の優遇措置を創設する。
◆第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し
・内国法人が有する暗号資産(一定の自己発行の暗号資産を除く)のうち活発な市場が存在するものについては、税制上、期末に時価評価し、評価損益(キャッシュフローを伴わない未実現の損益)は課税の対象とされている。
・こうした取扱いは、ブロックチェーン技術を用いたサービスの普及や事業開発等のために、暗号資産を継続的に保有する内国法人に対して、キャッシュフローを伴う実現利益がない中でも課税がなされるものとなることから、法人(発行者以外の第三者)の継続的な保有等に係る暗号資産について、期末時価評価課税に係る見直しを進める。
◆改正感染症法の流行初期医療確保措置による収入の非課税措置の創設等
令和4年12月に公布された改正感染症法が令和6年4月1日に施行されることに伴い、感染症の流行初期に病床確保と発熱外来に関して初動対応等を行う特別な協定を締結した医療機関について、感染症流行前の同月と同水準の収入を保証する「流行初期医療確保措置」による収入について、社会保険診療による収入と同様に事業税の非課税措置等を講ずる。
◆国立大学法人等への個人寄附に係る税額控除の対象事業の拡大
国立大学法人、公立大学法人、独立行政法人国立高等専門学校機構、独立行政法人日本学生支援機構及び大学共同利用機関法人に対する個人寄附について、経済的理由により修学が困難な学生等の修学支援に係る事業(修学支援事業)、学生又は不安定な雇用状態である研究者(ポスドク)に対する研究への助成又は研究者としての能力向上のための事業(研究等支援事業)以外の事業である場合にも、所得控除の他に税額控除を選択できるように措置する。