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2006年4月の記事

2006年4月14日

打ち出の小槌


「昔の芸人ってのは酒飲んで吉原で行っておおいに遊んだんだよ。だから芸がよかったんだよ。今の連中は真面目過ぎるんじゃないかな…」


お客様の中にはこんなことをいう方がたまにいらっしゃるが冗談ではない。大酒飲んで酔っ払って女遊びしていい芸人になれるのならこんなに楽なことはない。

私だってそうしたい位。きっとそういう方たちは志ん生師匠の上辺だけを見て言っているのだろう。

故五代目古今亭志ん生師匠、吉原に入り浸り、関東大震災の時はイの一番に酒屋へ飛び込んだという。「地震のせいで明日から酒が飲めねえと大変だ!」酒屋の方はさっさと避難して志ん生一人、酒屋でヘベレケになっていたという伝説的な落語家である。

「志ん生の酒の話を聞いていると酒の匂いがしてくるようだった…」当たり前だ本当に飲んで高座に上がってるんだから。酔っ払って高座で寝てしまった志ん生師匠、前座が起こしに行くと常連の客が「寝かしといてやんなよ!志ん生の寝顔なんか滅多に見られないんだから…」粋な人がいたもんだ。

こんな一面だけを見てそう言うのかもしれないが、志ん朝師匠に伺うと「親父は本当は凄い努力家。気がつくと部屋へ行って天井見つめてブツブツ稽古してたよ。」とおっしゃってた。

若い頃は貧乏のどん底を味わい、それでも一生懸命努力なさっていたそうだ。

晩年、寝たきりになって医者から酒を止められたのに酒を飲みたがって仕方がないから家族は酒を水で割って与えていたという。「近頃の酒はどゥも水っぽくていけねなぁ…」ある日いつものように水で割ろうとした時、なんか虫の知らせで割らずに渡すと「やっぱり酒はうめェなぁ!」これが志ん生師匠の最期の言葉だった。


昭和の名人といわれた落語家、弟子達によくこんな事を言っていたそうだ。

「おめえたち、俺が今こうして楽できるのは若い時努力したお陰なんだよ。若い時人一倍努力すると年ィ取ってからそれが打ち出の小槌になるんだよ…。」

なるほど…打ち出の小槌ね!

将来の打ち出の小槌を手に入れんが為、努力しよう。でも生半可な努力じゃあ手に入らないんだろうな~


2006年4月 3日

「金馬のいななき」出版にあたり


父、金馬が芸歴65周年を迎えた。

それを機に本まで出版することになった。

どうしてそういうことになったかというと、私のもう一人の父、と言うべき仁木さんという方が一緒に飲む度「師匠の昔話をなんかのかたちで残しといてやれよ、死んじゃったら戦前の寄席の様子なんか知っている人いなくなっちゃうんだから…」確かにそうだ。

たまに一緒に飲んでると「昔、こんな師匠がいた」とか「あのときあの人がこんなことを言ってた」なんて話をする。

聞いていて本当に興味深い話があった。

先のこぶ平兄さんの正蔵襲名のパーティで海老名香葉子さんがウチの親父に「うちのおじいさん(七代目正蔵師匠、三平師匠のお父さん、昭和22年没)ってどんな人だったの?もう落語界で知っている人、金馬さんしかいないのよねェ」と話していたそうだ。

私も何とか残そうといろいろな人に話したがどれもうまくいかなかった。


ある日、河野洋平さんからお呼び出しを頂いて、そこでお会いしたのが朝日新聞論説主幹の方。

本に出来ないかと話をするとじゃあ今度朝日新聞本社で会いましょう、ということになって後はトントン拍子に話が進んで出版ってことになった。

こんなに上手く進行するとは思わなかったが無事、3月17日に出版、親父の誕生日の19日に出版と芸歴65年と喜寿とを併せて祝う会をやった。親父は本当に嬉しそうでパーティの最中「そんなにはしゃぐなよ!」と言いたくなるくらいでした!

肝心の本の中味だが、手前味噌ながら実に面白い!先代金馬師匠の素顔、戦争中の寄席の様子、『お笑い三人組』の裏話、落語協会分裂の秘話など、落語に興味のない人でも充分楽しめます。

特に戦争中、若手落語家で林家照蔵さんという方がいたそうで、将来を嘱望されていたが間もなく出征して戦死したという。師匠の七代目正蔵師はガッカリしていた、という。

この平和な世に生まれて落語が出来ること、志半ばで戦死した大先輩に感謝である。一読の価値有!


最近そんなわけでプロモーターみたいなことばかりやっている。

今は鈴本演芸場でその記念特別興行、4月30日は江戸東京博物館でやはり記念落語会、5月13日から6月11日まで親父と先代の師匠のコレクションを展示する。

親父は大変な収集癖があり特にスクラップはすごい。先代もやはりそういう趣味を持っていてこれらを展示する予定だ。

その期間中、毎週土日12:00と13:30私も落語をやってます。

是非ご来場下さい!
◆本文中の、朝日新聞社より出版されました著書
 「金馬のいななき 噺家生活六十五年」三遊亭金馬著
 【http://opendoors.asahi.com/data/detail/7267.shtml】


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