打ち出の小槌
「昔の芸人ってのは酒飲んで吉原で行っておおいに遊んだんだよ。だから芸がよかったんだよ。今の連中は真面目過ぎるんじゃないかな…」
お客様の中にはこんなことをいう方がたまにいらっしゃるが冗談ではない。大酒飲んで酔っ払って女遊びしていい芸人になれるのならこんなに楽なことはない。
私だってそうしたい位。きっとそういう方たちは志ん生師匠の上辺だけを見て言っているのだろう。
故五代目古今亭志ん生師匠、吉原に入り浸り、関東大震災の時はイの一番に酒屋へ飛び込んだという。「地震のせいで明日から酒が飲めねえと大変だ!」酒屋の方はさっさと避難して志ん生一人、酒屋でヘベレケになっていたという伝説的な落語家である。
「志ん生の酒の話を聞いていると酒の匂いがしてくるようだった…」当たり前だ本当に飲んで高座に上がってるんだから。酔っ払って高座で寝てしまった志ん生師匠、前座が起こしに行くと常連の客が「寝かしといてやんなよ!志ん生の寝顔なんか滅多に見られないんだから…」粋な人がいたもんだ。
こんな一面だけを見てそう言うのかもしれないが、志ん朝師匠に伺うと「親父は本当は凄い努力家。気がつくと部屋へ行って天井見つめてブツブツ稽古してたよ。」とおっしゃってた。
若い頃は貧乏のどん底を味わい、それでも一生懸命努力なさっていたそうだ。
晩年、寝たきりになって医者から酒を止められたのに酒を飲みたがって仕方がないから家族は酒を水で割って与えていたという。「近頃の酒はどゥも水っぽくていけねなぁ…」ある日いつものように水で割ろうとした時、なんか虫の知らせで割らずに渡すと「やっぱり酒はうめェなぁ!」これが志ん生師匠の最期の言葉だった。
昭和の名人といわれた落語家、弟子達によくこんな事を言っていたそうだ。
「おめえたち、俺が今こうして楽できるのは若い時努力したお陰なんだよ。若い時人一倍努力すると年ィ取ってからそれが打ち出の小槌になるんだよ…。」
なるほど…打ち出の小槌ね!
将来の打ち出の小槌を手に入れんが為、努力しよう。でも生半可な努力じゃあ手に入らないんだろうな~

